BBS3のカーザヴェーチャさんの
「手稿で伝わるヴァイオリン協奏曲（CD, LP)」（No.271）のツリー（No.317, 325）や、
BBS4で、ヴィヴァルディのヴィルトゥオジティーの話題が出ています。
私はそのカルミニョーラのCDも入手できてなくって・・なのですけれど、松永さんの

> 当時ヴィヴァルディの演奏をきいた愛好家の記録で
> まさにこのようなカデンツァが証言されてるそうですね。

と仰ったエピソードについては知っていますので、紹介させてください。
カルミニョーラの演奏と、ヴィヴァルディ本人の演奏を想像しつつ。（^-^）

1715年（ヴィヴァルディ37歳）、フランクフルトの
建築家・音楽愛好家オッフェンバック（ウッフェンバッハ）は
ヴェネツィアでヴィヴァルディのオペラを観、
ヴィヴァルディのヴァイオリン演奏を聴きます。
以下「」内はオッフェンバックの手記です。

「作品の終わりの方になると、ヴィヴァルディはソロのオブリガートを
見事にやってのけ、そして最後に即興的なカデンツァをつけ加えた。
このような演奏は、いまだかつて聞いたことはないし、
けっして真似られるものではなかったので、私はまったく驚嘆してしまった。
彼は指を駒のすぐ近くに置いたので、弓でひくための場所がほとんどない位だった。
彼はそのようにして4本の弦を全部使って
フーガを信じられない程の速さで演奏した。・・・」

オッフェンバックは、ヴィヴァルディのオペラに何度も通い、
そしてヴィヴァルディを招待し、作曲を依頼します。
それが3月6日。そして3月9日には、

「午後、ヴィヴァルディが私の注文した10曲のコンチェルト・グロッソを持って来た。
彼は『あなたのために作曲したものです』と言った。」

ヴィヴァルディが協奏曲10曲を3日で作曲したという、有名なエピソードです。

「私はそのうちのいくつかを買った。
彼は、私がその曲をよりよく理解するために、
それらの演奏法をすぐ教えたいと言い出し、そのためにしばしば私の所へ来た。
我々は、私が曲を買ったその日からレッスンを始めたのである。」

このように曲の注文主にその曲の演奏法を指導する、
という形の弟子の取り方はヴィヴァルディはよく行なっていたようです。
ヴィヴァルディにとって注文主は、曲を買い上げてくれるお客様というより、
その曲をヴェネツィアから遠く離れた地に持ち帰って
紹介・普及のきっかけを作ってくれる、
大切な弟子という感覚だったのかも知れないですね。

（参考文献　パンシェルル「ヴィヴァルディ」音楽之友社）